ちゃんっ!これ、なぁんだ?」


昼休み、日吉が練習に行っちゃって、今日は日吉の練習を見に行こうか、やめておこうか、と考えていたとき。隣のクラスの鳳くんが、やけに高いテンションで、話しかけてきた。・・・・・・こういうときの鳳くんって、何か良からぬことを企んでることが多いからなぁ・・・。
そうは思いつつも、無視することはできないし、私は鳳くんの持っているものを見た。


「写真・・・?」

「写真は正解だけどね。はい、よく見て。」


そう言って、鳳くんは、私にその写真を渡した。・・・・・・って、これは!!
動揺している私を嬉しそうに見ながら、鳳くんはこれまた楽しそうに聞いた。(・・・鳳くんって、意外と性格悪いよね。まぁ、からかわれる私が悪いのかもしれないけど。)


「誰だと思う?」

「・・・・・・ひ、ひよ、し・・・?」

「正解!よくわかったね。」


わかるに決まってるじゃない!クラスも部活も一緒で、私がどれだけ日吉を見てきているか。しかも、私は日吉が好きなんだから、当然でしょ?たとえ、まだ会っていない、幼い頃の日吉でもわかるよ!
・・・って、小さい日吉?!!


「鳳くん。どうして、こんな物を・・・?」

「いやぁ、授業で幼い頃の写真を持ってくることになってね。そこで、この写真も見つけたから、ちゃんに見せようと思って、ついでに!」

「へぇ・・・、そうなんだぁ・・・。」


なるべく、平静を装わなきゃ!で、でも、小さい日吉って・・・!!


「どう??持ってきて、よかったかな?」

「そうだね・・・。」

「あれ、それぐらい??もっと喜んでくれると思ってたんだけどなぁ?」

「そうだね・・・。」

「本当は喜んでくれてる??」

「そうだね・・・。」

ちゃん。さっきから、同じことばっかり言ってるけど?」

「そうだね・・・。」

「・・・ちゃん、写真見すぎだよ?」

「み、見てないってば!!」

「焦りすぎ。」


そう言いながら、鳳くんはまた楽しそうに笑った。・・・絶対、意地悪だ。


「はい、じゃあ、これ。返すねっ!」


私は少し怒り気味で、今まで持っていた日吉の幼い頃の写真を鳳くんに渡した。
そしたら・・・。


「いいよ。それ、ちゃんにあげるよ。」

「えぇ!!いいの?!!」

「うん、いいよ。っていうか、やっと、いいリアクションしてくれたね!」


はっ、しまった・・・!冷静を装うのを忘れてた・・・。で、でも!この写真を貰えるなんて・・・。
いやいや!!ちょっと待て、自分!!落ち着いて、落ち着いて・・・。


「いや、私が貰うのは変でしょ?日吉本人に返すべきじゃないかな?」

「いいと思うよ。ちゃんは日吉のこと好・・・。」

「鳳くんってば!!」

「あぁ、ごめん。内緒なんだっけ?」


どうして、今日の鳳くんは、こんなに意地悪なの?!・・・いや、結構、普段から、こんな風だと言えば、そうかもしれない。
いつも鳳くんに怒ってる日吉の気持ちが、ちょっとわかるよ!


「お前ら、何を騒いでるんだ・・・。」

「日吉・・・!!」


今、日吉が救世主に見えた!!鳳くんをどうにかしてください・・・!!


「やぁ、日吉。練習、終わったの?」

「まぁな。で、お前はなんで、こっちの教室に・・・?」

ちゃんに、その写真を見せに来てたんだよ。」

「写真・・・?」

「うん、俺らが幼稚舎に通ってたときの写真。」

「・・・、ちょっと貸せ。」

「え!あぁ、うん。はい。」


私が未だ持っていた、その写真を日吉に差し出すと、半ば奪い取るかのように、日吉はその写真を手にした。


「いつ、こんな写真を・・・。」

「いやぁ、俺は知らないんだけど・・・。そのとき、日吉がすごく興味津々にカメラを見てたらしいよ。それで、うちの親が撮ってあげよう、ってことになったらしくて。」


そのエピソードを聞いて、私は想像してしまった。
こんな可愛い子が上目遣いで、目を輝かせてカメラを見つめてるなんて・・・。
うっ・・・!なんて、可愛いんだ、日吉・・・!!


「でも、その子の名前がわからなかったから、今まで渡せずにいたんだよ。今日の授業で要る、自分の幼い頃の写真を探してたら、それが見つかって・・・。もしかして、日吉じゃないかと思って、持ってきたんだよ。」

「・・・・・・そういえば、自分の家のカメラとは少し違う物を持っていた人を見かけて・・・。」

「ほらね!」

「だからと言って、なぜに見せる必要があるんだ・・・?」

「そう怒らないでよ。日吉が居なかったから、ちゃんとその写真の話をしながら、待ってたんだよ。」

「昼休みに俺が居ないことぐらい、わかるだろ・・・?」

「まぁ、落ち着いてよ、日吉。俺だって、昼休みの方が都合良かったっていうだけだから。」


結局、日吉も鳳くんに遊ばれてる気がする・・・。私たちが鳳くんに敵う日は来ないのかなぁ・・・なんて、少しガッカリしていると。


「それじゃ、俺の用件はそれだけだから。また部活で〜。」


そう言って、鳳くんは教室に帰って行った。・・・助かった!
日吉も鳳くんのペースに、少し疲れたらしく、ため息を吐いていた。それを聞いて私は少し苦笑いをしながら言った。


「日吉。写真見せてくれて、ありがとうね。・・・まぁ、日吉の許可は無かったけど。」

「別に、お前の所為じゃない。」

「ありがと。」

「気にするな。」


日吉は、私にはそんな風に優しく言ってくれたけど。鳳くんには結構怒ってたよなぁ。でも、私もかなり鳳くんには必死になっていた。


「本当、鳳くんに怒る日吉の気持ちがよくわかるよ・・・。」

も何か言われたのか・・・?」

「と言うか、いつもからかわれてる。」

「鳳の奴・・・。」


自分のことと重なったのか、日吉がイライラした様子で、鳳くんの名前を口にした。


「日吉!こうなったら、私と日吉で、同盟を結ぼう!」

「同盟・・・?」

「『鳳くんに困ってます!同盟』。」


私としては、結構本気だったんだけど、日吉は少し考えた後、ふっと吹き出した。・・・たしかに、同盟名のネーミングセンスは無かったけど、笑わなくたっていいじゃない!と思っていたのに。


「いいな、それ。だけど、困ってるだけじゃ、鳳に負けた気がして嫌だな・・・。」

「えぇっと・・・。じゃあ・・・、『いつか鳳くんに下剋上!同盟』とか?」

「そうだな。それなら、まだいいか。」


さっき、結構本気だったとは言ったけど、同盟で何かをするわけじゃない。ただ単に、私が日吉と一緒の境遇だってことを感じたいが為の同盟だ。・・・つまり、日吉には何の意味も無いはず。それなのに、意外にも日吉が乗ってくれて、嬉しくなった。
・・・こんな風に、日吉と同じ気持ちを分かち合えるなら、たまには鳳くんにからかわれてみてもいいかもね!・・・・・・本当、たまに、だけど!!
それにしても。日吉の子供時代の写真、可愛かったなぁ・・・。日吉の子供も、あんな感じなのかなぁー。うぅ、見てみたい!と言うか、むしろ、その子の母親になりたい、・・・要は日吉と結婚したいなんて、夢見がちなことも考えてしまったのは、仕方が無いってことで!













乙女思考なオチです(笑)。でも、いいと思いますよ。好きな人の子供を見てみたい、なんて素敵じゃないですか。
・・・と言うか、最近そんな風に思える人に巡り合っておりませんので、自分の憧れなのかも知れません(笑)。

あと、同盟名のネーミングセンスが無くてすみません(笑)。とりあえず、同盟を組ませたかっただけです。とは言え、もう少し考えるべきだったでしょうか?・・・いや、どうでもいいですよね!(笑)

('09/11/23)